はじめての芸術
公開フォーラム
REPORT
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はじめての芸術
REPORT
韓国総合芸術大学教授のチェ・ヨンエさんと心理学者のジャッキー・E・チャンさんをゲストに、乳幼児親子にとっての芸術体験の意味や可能性をテーマに公開フォーラムを開催しました。
韓国の劇団や大学、そして病院など様々な分野を横断しながら続けてこられた研究成果について、最新の脳神経科学理論を交えつつ、とてもわかりやすくお話をしていただきました。
乳幼児の社会性の獲得には、ドラマ(演劇)の果たす役割が非常に大きいそうです。それは生の舞台というものが観客に対して全てオープンになっている点にポイントがあるとのこと。
演者や舞台装置、照明など、小さい子どもは自分たちが見たいものを見て、見たくないものは見なくてもいい。自分の意思や感情によって見たいものを選ぶことができる、そのプロセスの中で主体性が育くまれるそうです。小さい子どもは特に、家などの環境の中では選択できる場面が限られていますよね。そこが演劇という空間が持つ、テレビや映画、ゲームなどは大きく異なる点だと言われていました。
また、演劇には大きく2つの力があるとのこと。
ひとつは「象徴の力」そしてもうひとつが「想像の力」だそうです。
3歳未満の子どもたちにとっては生きることすべてが発見につながっていて、言語や、身体感覚など、すべてを象徴的、記号的に獲得していくこの時期に、演劇においての人の動きや単純な音で構成された物語を体験することは、とても意味があるそうです。しかしこういった内容のものに集中できるのも、3歳未満までとのことでした。
もう一つの「想像力」については、子ども自身が見たことがないものに出会った際に活性化すると言われていました。
人は何かを見ているとき、それを自分が同じようにしているように感じるらしいのですが(ミラーニューロンという共感能力を司る脳神経細胞が働いている)、見たことのないものが多い子どもは、新しい動きを目にするとまず、それを脳の中で想像し認識しようと、自分の中にある小さな記憶を頼りに、部分から全体を再現するために領域を広げようとするのだそうです。その試みこそが想像力を育むことにつながっているようです。
※このフォーラムは、乳幼児親子の舞台芸術作品の体験の機会を広げるため、福岡市を中心に活動しているアーティストを対象に、新たなプログラム開発と人材育成を目的に、ベビードラマの先進地である韓国より研究者を招いて行いました。