コラム
様々な活動の中でも、特に力を入れて10年以上に渡って活動してきたのが、ミュージカルづくりを通した子どもの育成とまちづくりを目指した「遊びと学びのコミュニティスクール」です。
子どもが安心して遊べる場の減少や地域の人間関係の希薄化が進む中で、文化芸術を通した子どもの育成とまちづくりをめざして、2007年から始めました。「遊びと学びのコミュニティスクール」という名前の由来は、「ワクワクドキドキにあふれた遊びと学びで育ち合い、一人ひとりの子どもが輝き地域が元気になるコミュニティをつくっていこう」という思いや願いが込められています。特徴は、一流のプロの専門家による芸術文化体験と、子どもたち自身が企画運営する活動があることです。
この活動は、参加している子どもたちが、年間を通して様々な芸術体験ワークショップを行い、一年の最終プログラムとしてミュージカル公演を地域の人たちを対象に行います。なぜ、最終プログラムをミュージカル公演にするのかというと、舞台の上に身をおいてココロとカラダすべてを使って舞台のことを学んだり、観客とのコミュニケーションを楽しむことを体験できるからです。また、親や家族、地域の方々に観ていただき、子どもの生活や成長発達の過程で経験すべき大切なことは何かを共に感じる機会にするためでもあります。
受け身になることが多い生活の中で、できるだけ子どもたち自ら考え、手足を動かし、つくりあげていく参加型の活動を大切にしています。親も、我が子を送り出すだけではなく、一緒に参加体験したり、親同士仲良くなったりしながら、子どもたちの活動を支える一員に成長していきます。だからこそ、公演当日は、舞台に立つ子どもたちも、それを観る親にとっても感動と達成感は大きく、ずっしりとした体験となって、明日への活力につながっていると私は思います。
ミュージカルはダンス・歌・演技・美術までを含む総合芸術であり、総合的な表現活動です。幼児から高校生まで、異年齢の子どもたちが一緒に活動しながら一つの舞台をつくりあげていくという共同活動を通して、一人ひとりが持っている力や可能性を伸ばし、感性とコミュニケーション力、創造力を育んでいきます。
これまでの活動で子どもたち一人ひとりがそれぞれの得意なことや好きなことを発揮して輝くシーンにいくつも出会ってきました。また、親にとっても、子どもの成長を喜び合い子育ての悩みや知恵を交流しあう居場所になっています。また、親もプロの舞台美術スタッフと一緒に舞台で使う大道具や小道具をワークショップでつくる体験もします。ミュージカルスターやダンサーになることが目的ではなく、様々な体験や人との出会いと交流を通して、子どもも大人も、自分自身が楽しみながら共に学び合い育ちあうことを大切にして活動してきました。
「遊びと学びのコミュニティスクール」を始める時に、単発のイベントでもなく、1年限りということでもなく、できれば年度を越えて5年、10年の長期的スパンで活動することを通して、一人ひとりの子どもの成長を長い目でみて支えると共に、将来的には、舞台美術や作詞、作曲、バックステージ担当も含めた子どもの参画や地域共同型のミュージカルづくりをめざしていきたいと考えて活動してきました。そうした子どもたちの活動を支えるのは、親や地域の大人、専門家であり、また、この活動を体験した子どもたちであり、子どもから大人まで世代を越えた異年齢のつながりができ、地域コミュニティが豊かに発展していくことを願いました。
「遊びと学びのコミュニティスクール」は、子どもの育成と芸術文化を通したまちづくりのモデル事業として発信し、こうした活動を支える支援体制づくりと合わせてすすめてきました。10年経った今、活動に参加した子どもたちの成長、親や子どもを取り巻く大人たちの変容、支援者や賛同者の広がりが見えてきて、その願いが形になって実現していることを実感しています。